Nexus 5xが欲しいけど 1「理想と現実」

nexus5x

Nexus 5Xが欲しい

2年前の12月、auのスマホを解約し、Y!mobile(旧EMOBILE)のNexus 5に換えた。

(その顛末は→ 英雄の書とNexus 5)

当時のauのスマホの月額使用料がたしか平均で7,000円台後半であり、EMOBILE(現Y!mobile)のNexus 5が端末の割賦代も含めて2年縛りで月額約4,500円となった。

3,000円近くが浮くことになり、最新機種を手に入れた上に安い!ヤッホーとなった。

auの解約に違約金が10,000円近くかかり、さらにMNP(携帯番号を他の会社に持っていける仕組み)の転出手数料が2,000円近くかかり、EMOBILEの新規契約手数料に3,000円近くかかったが、EMOBILEよりのキャッシュバックが20,000円ついたのでプラス5,000円と月額で3,000円得をした機種変更だった。

それから2年、最新機種だったNexus 5もいまや2年前の昔のスマホとなった。

そして今回GoogleよりNexus 5の後継機種のNexus 5Xが出るウワサを聞き、スマホを新しくしたい思いが強くなった。

最近Nexus 5で動画を撮ったのだが、画像がカクカクと動きカメラの調子が悪いようだ。そういえばどうも最近動きがモッサリしている。換え時なのかもしれない。

理想と現実

Nexus 5の後継のNexus 5Xのことを調べてみると、サイズが少しだけ大きくなり、値段もNexus 5より少し高くなりそうとのこと。

まず今の私の状況が下記の通り。

[ 現実 ]

端末:Nexus 5

キャリア:Y!mobile

月額使用料:4,500~5,000円程度(割賦含む)

契約期間:2015年12月まで(12月でNexus 5の割賦終了)

で、下記が理想である。

[ 理想 ]

端末:Nexus 5X

キャリア:どこでも

月額使用料:5,000円(割賦含めて)以上はNG、1,500円(割賦含めて)にならない?

契約期間:長くても2年

ちょっと都合がいいようではあるが、今のキャリアがY!mobile以外であった場合、Y!mobileにキャリアを変更すればおそらくキャッシュバックも付き、上記の理想が現実のものになるかもしれない。

でも私はすでにY!mobileなので、一回どこかのキャリアに換えてからまた戻ってくる必要があり、その場合はY!mobileとどこかのキャリアに1万ずつ違約金を払い、さらに手数料を取られるので計30,000円近い出費になる。

だから、あたまを落ち着かせてもっと現実的な着地点を探した。

その着地点が下記である。

[ 理想と現実的の間の着地点 ]

端末:Nexus 5よりは新しい端末

キャリア:どこでも

月額使用料:5,000円(割賦含めて)以上はNG、1,500円(割賦含めて)にならない?

契約期間:長くても2年

理想と現実とのギャップはNexus 5Xをあきらめることで埋めた、つまり現在市場にある、私が欲しくなるような端末である。

国内メーカーのAndroid端末はウンコ

まず、スマホと言って最初に思い浮かぶのがiPhoneだが、あれは高い、さらにiPhone6はでかい。なので却下。

というか私はAndroid端末がいいのだ。iPhoneなんてみんなが持っているからへそ曲がりの私には向いていない。

Android端末はdocomo、au、softbankより国内メーカーの端末がたくさん出ているが、みんなダサい。何がダサいかと言うとOSがダサい、ダサいったらダサい。Androidはカスタマイズがきくので、各スマホ端末には自社の「特製」AndroidOSが入っているのだが。

これがとにかくダサい。ガラケー・オールインワンPC時代からの悪しき伝統なのか、各社独自の時代遅れのデザインで自社オリジナルの「特製」アプリを大量に入れている。

で、さらにAndroidのバージョンが最新でない。「特製」OSのため、新しいAndroidのバージョンがリリースされても自社の「特製」OSに適用させられないのである、ってアホか。

今のAndroidの最新バージョンは5.1だが、日本国内メーカーのAndroidスマホ端末のOSはAndrodi4.x台がゴロゴロいるのだ。

Appleに勝つつもりあるのか?と言いたくなる。

端末のデザインは結構よさげなのがたくさんあるのにだ、残念無念。

(特にSHARP)

ZenFoneという悟り

だから最新のAndroidが入るお約束になっているNexusシリーズであるNexus 5を買ったのだった、だからやっぱりNexus 5Xがいい。

いやNexus 5だって新バージョンのAndroidがリリースされればすぐに最新AndroidOSが使えるようになるから、それでいいのではないか?と思ったが、新しいものが欲しいとなるとそういう冷静なブレーキがきかなくなる。

価格.comで調べてみると私の物欲を刺激するスマホが見つかった、Asus(エイスースと読みます)のZenFoneシリーズだ。

楽天モバイルというキャリアから出ているようだ。で、楽天モバイルのお店は渋谷にあるようで、職場の近くなので仕事帰りに寄ってみた。

ZenFoneはデカかった、今のNexus 5も充分デカいと思うのだが、それよりも一回り以上大きい。

iPhone6plusみたいな大きさ、タブレットだよ、これ。

店のお兄ちゃんに聞くと、私がY!mobileから楽天モバイルに乗り換えるとはキャッシュバックで2,000ポイントがつくようである。

20,000円ではない、2,000ポイントだ。なめてる。で、さらにZenFoneは店頭販売では割賦はやっていないようで楽天カードを持っていればネットで割賦で買えるようだ。おれ、楽天カード持ってないよ。

そうか、そうか。ZenFoneは私に買って欲しくないということか。

で、唐突に次回に続く。

連載終了 「NEXUS 5Xが欲しいけど」バックナンバー

  1. 「理想と現実」
  2. 「Nexus 5のままでいいのか?」
  3. 「Nexus 5、Nexus 6、Nexus 5X、Nexus 6Pのスペック比較してみた」
  4. 「Android6.0は何が変わった?フォントだよ!」
  5. 「Y!mobileでの月額料金が決定・・・」
  6. 「買わないことにした」
  7. 「買わないことにしたけど、欲しくなる」
  8. 「(Nexus 5Xが買えない)Nexus 5ユーザーに送るNexus 5Xとのスペック比較」
  9. 「さよならY!mobile」
  10. 「やっぱりさよならY!mobile」
  11. 「欲しい端末が出てきた?けど」
  12. 「ついにMNP予約番号をって、取れないじゃん・・・」
  13. 「MNP予約番号を取得!そして格安SIMに申し込んだ」
  14. 「格安SIMに乗り換え完了、Nexus 5をしばらく使う予定」
  15. 「Nexus 5の後継機はAcer Liquid Z530に」(番外編)

あらためまして、こんにちは。

あらためまして、こんにちは。

3年半前に結婚して、それが原因でとは言いたくはないが数年間続けていたブログみたいなWebサイトを閉鎖した。

本の話とか映画の話とか、日記とかを載せていて、1日に1人が見ればいいくらいのアクセス数で世界の片隅でこそこそと5年くらい続けていた。

大学時代に映画サークルの会報をメールマガジンの形で発行していて、それがWebサイトに移行した、というなんとも動機や思想があいまいな形のサイトであった。

映画サークル自体は2年ほどで休業状態となったので、それよりも長く続いたのだけはえらかった。

私には小さな野望、いや大きな勘違いというか打算があった。

そのサイトが大きく有名になれば自分らにモノを書く依頼などが舞い込み、とんとん拍子に有名人になり楽に暮らせてハッピーになる。

というのがその都合のいい野望であったが、そう カンタンに行くわけもなく、誰かのブログが炎上したというニュースを見るたびに私らのサイトは何書いても誰も見てないので炎上すらしないから自分らで火を付けようとしたらチャッカマンのガスは切れているしそもそも燃えるものがないのではないか?という大きく深い疑惑などが噴出し、さらにさらに燃えるための酸素がここには圧倒的に不足していて、地球から2、3光年離れた真空状態の宇宙空間に漂っているのではないかという疑問も出てきて大変だったのである。

結局わかったのは「燃えるには理由がある」ということ。だから、燃えないのにも理由があるのである。

twitterで有名人のプライベートを暴露して炎上して、アカウントがなくなるような騒ぎがあるが、おそらく私らのサイトでは何を言っても絶対に炎上しなかっただろう。

あれは、twitterという土台に乗っかって発言をしているから炎上するのであり、まあ私らのサイトは何の土台にも乗っかっておらず、じゃあtwitterみたいな土台に乗れよと言われるかもしれないが、それはそれで恥ずかしいのだ。

って、なんだかよくわからなくなってきた。

それがわかったくらいの時に結婚をした、他の人たちはどうだか知らないが2人暮らしはなかなか自分の時間が持てない。

で、その全く燃えないサイトを更新する気力が失せてしまいいきなり閉鎖でサヨナラとしたわけなのである。

なのだが、週に1回の間隔で更新していたサイトがなくなると、1週間の思いや愚痴を吐き出す場がなくなり、なんだかストレスが溜まり始めて会社でもうまく行かなくなってきた。

facebookに「今日も私は幸せです」と空の写真を載せたり、誰かの投稿に「いいね」をしてストレスが解消されるかためしてみたが、ストレスはまったくなくならない。

むしろfacebookでゴチャゴチャ書いている友人たちにイライラしてストレスは増えるばかり。

結局私にはあの「燃えないサイト」が必要なのではないか?と感じ、再度同じようなサイトを始めることになったのである。

前回はサイトの性格がよくわからなくて読んでいる小数の人間すら混乱させてしまっていたと思うので、ルールを決めた。

-旧ルール-

「何の話を書いてもいいけど絶対にそれを本と絡ませる」

-新ルール-

「何の話を書いてもいい」

本に絡ませるのがめんどくさくなったのではなく・・・

めんどくさくなりました。

これで私はさらに書きやすくなるが、人気の本の紹介ブログみたいになって私の小さな野望が達成できることはないだろうな。

新・さ迷える転職大変記 第1話 「会社辞めるよ」

上司の存在感

ずっとブログに書こうと思っていたが、「本に絡めて話を書く」というブログの旧ルールに縛られて本に絡めつつ色々書いたが全部書ききれないのでブログのルールを変更して書き始めます。

私の転職のことを書きます。

転職するまで精神的に結構大変だったので、今転職に悩んでいる人たちの参考になればと思います。

転職を決意したけども

いまから3年前、2012年の夏に上司との関係に疲れ、1週間の有給休暇を会社からもらい、休み明けにその上司に「辞めます」と言った。

「舐めてんの?いきなり辞めてどうすんの?給料なくなるよ。まあ落ち着け」と言われ、

「確かに舐めてるかも、給料なくなったら困る、ちょっと落ち着こう」と思った。

仕事イヤだな→1か月後には子供生まれるし→イヤな仕事をしていたら子供の教育にもよくない→だから仕事辞めよう→父になるんだ、頑張って次の転職先探すか起業するぞ!→父は偉いんだ!

そう、仕事を辞めようと思ったのは子供が生まれる1か月前、子供に好きな仕事をしていないお父さんを見せるのがイヤだなと漠然と思ったのだが、それは子供のせいにしていただけで仕事がイヤになって辞めたい理由を色々考えていただけだ、と今になるとわかる。

さらに、重要なのは仕事は好きとか嫌いとかじゃなくて、お金もらうためにやっているのだから、今自分にお金を払ってくれている会社以外からお金を手に入れる方法(転職・起業とか?)をしっかり考えて準備した上でないと、好きとか嫌いとか言っている場合じゃないのだ、ホントウは。

独身で暮らしているならともかく、家族がいたらなおさらである。

私が辞める!と決意したのは一番間の悪い時期だった、妻はいまだに「あの時が一番きつかった」と言っている。

そりゃそうだ。

で、その決意を上司の説得により翻意させられ少し冷静になった私は転職サイトに登録した。

登録したのはリクナビ転職、マイナビ転職、エンジャパン転職、Greenの4つのサイト(Greenに登録したのは転職活動終盤になってから)。

※Greenはネット上で「ブラック企業に勤めるあなた!」みたいな広告をたくさん見るが、Greenに載せている企業は結構ブラックな企業が多いように思った。

私見ですが。

連載 「新・さ迷える転職大変記」バックナンバー

妻または恋人または同居人または娘が妊娠した男性に 『予定日はジミーペイジ』

予定日はジミーペイジ

  • 書名:『予定日はジミーペイジ』
  • 著者:角田光代
  • ISBN: 978-4101058276
  • 刊行日:2010年7月28日
  • 価格:590円(税別)
  • 発行:新潮文庫
  • ページ数:268
  • 形態:文庫

「つのだみちよ」だと思っていたが「かくたみちよ」だよと誰かに言われたのはいつだったか、私には関係の無い作家だとずっと思っていたが、妻から薦められて読んでみた。

ちょうど2人目の子供が生まれる少し前のことだった。

妊娠した女性(30代?)が自分の体調の変化にとまどい、夫にイライラとしながらもなんとか出産日を迎えるという筋書きものである。物語は世の中(特に男性)が求める無限の愛に満ちた「母親像」からは少し離れた、かなり冷静で現実主義的な女性の視点で進んでいく。

物語のリアルさから「つのだみちよ」が実際に妊娠・出産を経験したのかと思い、読後に本書と角田光代のことを調べてみたがそうではなかったらしい。妊娠経験のある色々な女性にインタビューをしたのだろうか。

自分が体験していないことを体験したように書くというのはプロの作家の技術なのだろう。

妊娠している女性とどう接していいかわからない!という方にはオススメである。

再就職から始まる壮大な物語 『不毛地帯』

不毛地帯

  • 書名:『不毛地帯』

  • 著者:山崎豊子

  • 発行:新潮文庫

  • 形態:文庫

  • 第1巻

    • ISBN: 978-4101104409
    • 刊行日:2009年3月15日
    • 価格:890円(税別)
    • ページ数:638
  • 第2巻

    • ISBN: 978-4101104416
    • 刊行日:2009年3月15日
    • 価格:790円(税別)
    • ページ数:590
  • 第3巻

    • ISBN: 978-4101104423
    • 刊行日:2009年3月15日
    • 価格:840円(税別)
    • ページ数:634
  • 第4巻

    • ISBN: 978-4101104430
    • 刊行日:2009年3月15日
    • 価格:790円(税別)
    • ページ数:557
  • 第5巻

    • ISBN: 978-4101104447
    • 刊行日:2009年3月15日
    • 価格:840円(税別)
    • ページ数:592

1945年8月15日、日本軍の大本営参謀・壱岐は敗戦の報せを持って満州に渡る。

壱岐はすぐに日本へ戻る予定だったが、同胞を捨てて日本に戻る気になれず満州に残り、その結果満州に侵攻してきたソ連軍に捕まってしまう。

壱岐を待っていたのはシベリアでの長く苦しい抑留生活だった、仲間を何人か失いつつも過酷な環境を生き延びた壱岐はなんとか日本に帰国する。

敗戦から10年以上経った日本にで、壱岐はまるで浦島太郎、自分が死力を尽くして戦った太平洋戦争は過去のものとなり、日本は繁栄に向けて走り出していた。

元部下の再就職の口を探し、自分の就職は二の次であったが、近畿商事の大門社長から大本営参謀の知恵を貸してくれと入社を請われる。

職歴がイコール軍歴となっている壱岐だが昔の自分の軍歴を利用したビジネスはやりませんよと念を押した上で近畿商事に入社する。

しかし、壱岐は自衛隊の次世代戦闘機受注を巡る商社間の争いに巻き込まれていく・・・

全5巻だったが、一気に読み切ってしまった。

年末に義理の父から面白いと言われ、もらったのだが、ありがとうございますお義父さん。

大学生時代に読んでいたら商社への就職を考えたかもしれないくらい、商社に対するイメージが変わった。

商社マンって結構かっこいいなと。

主人公の壱岐が、シベリア帰りで自分の畑違いの商社に再就職するのだが、私もちょうど転職をしたばかりだったのでその境遇と重なった。

と言っても生き馬の目を抜くような商社マンの世界と今私が行っている研修に毛の生えたような仕事では大きな違いがあるけども。

全員が感情論になっている今だから 『信長燃ゆ』

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  • 書名:『信長燃ゆ(上・下)』
  • 著者:安部龍太郎
  • ISBN:978-4101305165、978-4101305172、
  • 刊行日:2004年10月1日
  • 価格:710円、790円(税別)
  • 発行:新潮文庫
  • ページ数:481、564
  • 形態:文庫

安保法案というものが衆院を通過した。

世の中は戦争になるという雰囲気ができてきて、さらに太平洋戦争に日本が突入したときに今の空気が似ているだとか言う人たちもいる。

集団的自衛権が行使できるのであれば、戦争ができると言うことになり、じゃあ戦争しよう、そして徴兵制だということになるのだろうか。

ある意味当たっていると思う。

でも、なんか違和感なのだ。

本書は、天皇制を乗り越えようと画策する織田信長の野望を天皇側(天皇を傀儡とした朝廷側と言った方がいいか)の近衛前久が潰す(本能寺の変)という話である。

天皇を傀儡とする朝廷が日本の全てを決めていたらスペインやポルトガルに攻め込まれてしまうのでは?と憂慮する織田信長は天皇制を超える(潰す)事を考えるのだが、それを察知した朝廷側がそれを先に潰すのである。

信長が本能寺で殺されちゃったのはスペインとかポルトガルの脅威を自分の頭の中だけで解決しようとしたからなのだろうか。ねえどうする?スペインとかポルトガルの植民地になっちゃうかもよ?って信長が大声で言っていれば少しだけ歴史は変わっていたかもしれない。それがいい方向にかはまったくわからないけど。

信長が倒れた後、その家臣であった秀吉が文禄・慶長の役という太平洋戦争に非常に酷似したムダな戦争を行い、そのさらに家臣であった家康が鎖国政策という外国と大規模な戦争をしにくい体制を作り上げた。

今の状態が文禄・慶長の役の前の状態であるとすれば非常に恐ろしいが、実際にどうなるかはわからない。

憲法だとか天皇だとかがどうだということじゃなくて、戦争が起こって、それによって殺されたくもないし殺したくもない。

そのために色々考えるべき時に来ていると思うのだ。

憲法とか安保法案とか言っている場合ではない、まず脅威があるのか、そこに、あるのか?ほんとうに。

憲法をどう解釈するかとか天皇がどうだとかで右と左で言い合っている場合ではない、そうじゃなくてみんな平和に暮らしてくにはどうするのがいいのか、どういう憲法がいいのかを話し合わないかい。

ねえ。

続編はいつだ? ヒリヒリとするサバイバル小説『突変』

突変

  • 書名: 『突変(とっぺん)』
  • 著者: 森岡浩之
  • ISBN: 978-4198938895
  • 刊行日: 2014年9月15日
  • 価格: 1,000円(税別)
  • 発行: 徳間文庫
  • ページ数: 733
  • 形態: 文庫

小説には、「雰囲気を味わうもの」と「先が気になるもの」の二つがあるように思う。

本作は最近読んだ中でも「先が気になるもの」の中で一、二を争う面白さだった。

舞台はごく近未来の日本。地球規模で突変と言われる事故が相次いで起きていて、大阪周辺の地方がパラレルワールドの地球と入れ替わってしまって数年が経っていた。

パラレルワールドの地球には凶暴な生物たちが多数棲んでいて、大阪周辺が裏返ったため、そこが凶悪な地域に変貌してしまっていた。

日本のどこかでまた突変が起きるのでは?と戦々恐々として人々は過ごしていた。

そんな時、関東のある市にある町内がいきなり突変してしまう。

突変はもっと大きな地域で起きると想定されていたため、備蓄の食料もないし電気も水道の用意もない、とないないづくしのサバイバルが始まるのである。

登場人物たちはヒーローではなく、そこらへんの人たち。

ニート?の青年、町内会の会長、思い込みの激しい市議、スーパーの店長、など。

さて彼らは元の地球に戻れるのだろうか?

みんな突変して、嘆き悲しむが、唯一夫が突変して裏地球に行ってしまっていた女性とその息子だけは夫(父)に会えるのではないか?と喜んでいるという設定がミソになっていた。

いきなり今住んでいる町内が裏返ってしまったら?と考えると恐ろしい。

隣の人たちと未知の凶暴な生物たち相手にサバイバルできるのか。

ネットにもつながらないだろうし、スマホだって使えない、突変の情報を検索しようにもそんなことはできないのだ。

本作品はこれ以上続くと面白くなくなるかもしれないという絶妙なところで終わっている。

誰もが気になる突変の謎解きにはまだ踏み込まないし、物語の中でも触れられている突変で大儲けをしたらしい関西の怪しいおじさんについてもほとんど語られない。

続きがとにかく気になるのだが、これ以上続くと面白くなくなるかも。

ああジレンマ。

迷路と迷子と非日常 『四次元温泉日記』

四次元温泉日記

  • 書名:『四次元温泉日記』
  • 著者:宮田珠己
  • ISBN: 978-4480432384
  • 刊行日:2015年1月10日
  • 価格:720円(税別)
  • 発行:ちくま文庫
  • ページ数:294
  • 形態:文庫

『晴れた日は巨大仏を見に』でとても有名?な宮田珠己の温泉「旅館」に焦点を当てたお笑いノンフィクションが本書。

温泉旅館の主役は本来温泉であるはずだが、本書の主役は温泉旅館の建物自体である。

ホテルだとそうでもないが、旅館は建て増しを重ねているところが多く、新館と旧館やらが入りまじり、玄関でチェックインして仲居さんに連れられて部屋に入って窓の外を見ると思いがけない方向の景色だったりしてとても混乱する。

本書には著者の手による、各温泉旅館の館内図が挿入されていて、実はこれが本書の本当の主役なのである。

世の中には迷子になるのが好きな人間とそうではない人間がいる。

私は夜に知らない街を散歩してあわや迷子になるのでは?今日はお家に帰れないのでは?という期待と恐怖が心に満ち溢れるのがとても好きであり、行き止まりに出くわすと大興奮する。

私が結婚をした女性(妻)とも子供が生まれるまではよく夜の街を散歩していた。しかし、我が妻は道が行き止まりになるのが嫌なようで、「ここ行き止まりっぽいね!」と興奮して私が言うとこの人の頭の中が理解できないという顔をしていた。

そんな女性とうまくやっていけるのだろうか、と心配になったが、行き止まりに興奮する夫を見た妻の方がその思いは強かったろう。

しかし、そんな些細な事を気にしているようでは結婚生活は長く続かない、というか、そんな些細な事は日常という奔流にあっという間に流されていってしまう、結婚は驚きと失望と忍耐の連続であり、その中に希望と幸せが詰まっているのだ。

夜の街を散歩していると家々の灯りが目に入ってくる、自分は知らない街という非日常空間にいるが、その街を日常とする私の知らない人々が日常の生活を私にとっての非日常に見える家の中で送っている。

私の知らない日常と私の非日常が家の灯りで繋がる。

温泉旅館の迷路と知らない街での迷子、そんな日常と非日常のあわいをフワフワと漂ってみたいならぜひおすすめの一冊である。

最近は夜の街を散歩する機会が無いので、久々に散歩をしてみよう。そうしよう。

戦国スパイ小説『銀の島』の登場だ!

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  • 書名:『銀の島』
  • 著者:山本兼一
  • ISBN: 978-4022647436
  • 刊行日:2014年5月30日
  • 価格:840円(税別)
  • 発行:朝日文庫
  • ページ数:568
  • 形態:文庫

本作はフランシスコ・ザビエル、その従者アンジロウ、ポルトガルの密使バラッタの3人を軸に描かれた戦国時代のお話である。

第二次大戦前にある日本人がインドのゴアである書物に出会うことで物語は始まる。その書物はザビエルの従者アンジロウが書いたもので、ザビエルの知られざるお話が書かれていた・・・

学者か小説家がある町、または村で知られざる真実が書かれている書物に出会う・・・という風にお話が始まるのが私は好きだ。

「これは真実の話です」と読者に思わせるように話が進んでいき、ウソだろ?と思いつつも、別にウソでもホントウっぽく見える方が物語的には楽しいからウソでもいいや、でもやっぱりホントにあったことなのでは?みたいに感じられる小説が好きだ。

私が10代の終わりに読んでいたフレデリック・フォーサイスのお話なんて、みんなそんな感じであった。『オデッサファイル』なんて、ホントとウソが非常にうまく混じり合っていてスゲー楽しかった。

そのフォーサイスの真骨頂がフランス大統領のシャルル・ド・ゴールの暗殺未遂事件を扱った『ジャッカルの日』で、これはホントウに面白かった。でさらに似たような話だとジャック・ヒギンズの『鷲は舞い降りた』もあって、これはイギリスのチャーチル首相をドイツ軍が誘拐しようとする話なのだが、あ、あとグレン・ミードの『雪の狼』もすごかった。スターリンを暗殺しようとソ連に潜入する話で・・・

話が、それた、イヤあんまりそれてないか。歴史の真実が書かれている!みたいに思わせて読者を楽しませるスパイ小説が私は好きだったのだ。

本作『銀の島』で暗殺もしくは誘拐の対象となるのは、中国地方の石見銀山であり、その事件の実行犯になろうとしているのがポルトガル人のヴァレッタ、そしてそれを防ぐ正義のヒーロー?はアンジロウ、で敵か味方がわからないのがザビエルである。

楽しそうでしょ?読んでいる時には気づいていなかったが、これはスパイ小説である。血沸き肉躍る隠密の攻防戦の舞台は第二次大戦でも冷戦でも戦国時代でも面白いのである。

ズームイン朝と山本一力『くじら組』

くじら組

  • 書名:『くじら組』
  • 著者:山本一力
  • ISBN: 978-41676701777
  • 刊行日:2012年7月10日
  • 価格:629円(税別)
  • 発行:文春文庫
  • ページ数:412
  • 形態:文庫

去年の終わりに、義理の父から読まなくなった本を大量にもらったのだが、その中に入っていたのが本作品。

山本一力との出会いは、今から10年くらい前だろうか、何かの賞を受賞して日本テレビの『ズームイン!!朝!』に家族で出演していたのを見たのが最初だった。

自転車で日本テレビまでやってきました、と清々しく話していたおじさんが山本一力だった。

何で朝の情報番組に自転車でやってきたのかは謎だったが、普通のおじさんが家族で出演という事態が頭の片隅に残った。

それから本屋で見かけるたびに気になっていたのだが、このたび義理の父からの縁により遂に読むこととなった。

舞台は幕末の土佐藩。

黒船が土佐沖を走っているのをくじらを捕る漁師たちが見つける。

その漁師たちの集団であるくじら組が江戸に上るまでのお話である。

あらすじとしてはなんてことはない、先が気になるだとか、驚天動地の結末などはない。

だが、いちいち描写が細かく丁寧だ。

最近の歴史・時代小説に慣れていた私は、最初は重いなと思ってしまったが、

その丁寧な語り口が、数年寝かされた古酒のような味わいを醸し出すのである。

なかなか進まない話に、最初は欲求不満となるが徐々にその物語世界に引き込まれていく。丁寧な描写が物語世界の中へ読者を誘っていくのである。

山本一力を毎日読みたいとは思わないが、年に数回読みたくなる作家になりそうだ。