新・さ迷える転職大変記 第4話 「スマホゲーム嫌いなんです」

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職務経歴書を忘れる

次の面接は本命の本郷の教育系ソフトウェア開発会社である。

本郷は私が10代のころに通っていた予備校があったのもあり、親近感がある。落ち着いた街で、チャラチャラしていないのもいい。

会社の帰りに神田の本屋街に寄れるのも魅力だ、たぶん遅くて本屋は全部閉まっちゃってるけど。

面接は午前中、この日は午後にも面接を入れたので会社からは1日有給休暇をもらった。

飯田橋の駅から本郷まで歩いた、昔よく予備校まで歩いた懐かしい道だ。

会社に着き、役員の男性との面接が始まった。今回は一次面接で、これをクリアすると二次面接となり社長との面談となる。

履歴書を渡し、職務経歴書を渡そうとしたら職務経歴書を忘れていた・・・

「すいません忘れました」と言うとその役員は不機嫌そうに「忘れたの?じゃあ口で説明してください」と言った。

こりゃ落ちたかなと思ったが、なんとか口で説明を開始。

自分の経歴なので、特に問題なく説明はできたが必要なものを忘れるのはまずい。

「何で転職活動を?」と聞かれ、「会社のやり方が合わないんですよ、お金の儲け方が気に入らないのです」と答え、今の会社はこんな感じのお金の儲け方をしているんですと説明した。

すると「そういうビジネスモデルもあるから、私はそれは悪いとは思いません」と返される。

少なくともこの人には感情論ではダメなんだなと思った。

と、なんとなく手ごたえを得ないまま、一次面接は終了となった。

職務経歴書を忘れて手ごたえもないのであれば、これはダメだったか。

スマホゲームは好きですか?

気を取り直して本日二個目の面接、渋谷のスマホゲームの開発会社へと向かう。

場所は渋谷、なんと在職中の会社から歩いて一分ほどのところ、明治通り沿いの大きなビルで、ランチの時などはよくこのビルの前を通っている。

いつも外から見るだけのキレイなビルに入り、そこの10階?くらいまでエレベーターで上がる。

エントランスは六本木のWeb制作会社よりもキレイで、真っ白。受け付け用の電話はダイヤル電話風のレトロなオシャレでしょ!という感じのものでちょっとイラっとする。

が、来意を告げると出てきたのは笑顔の女性。

ずいぶん景気がいいのかなと思った。

面接用の部屋に通されると窓が大きく下界が見渡せる、私の所属する会社は遥か下に見えるかと思ったが、小さすぎて他の中くらいのビルに隠れていて見えなかった。

先ほどの笑顔の女性が「これから簡単な筆記試験をして頂きます」と言って、紙を数枚机の上に置いた。

「30分でやっていただき、その後面接となります」と言った。

紙は2枚ほどだったろうか、IT用語の説明とプログラミングの問題、あとデザインの問題だった。

IT用語もプログラミングも私にとっては結構専門的な内容だと感じた、またデザインは四角い図形を一筆書きで区切ってキレイなデザインを作れ、というものでもうこれはお手上げ。

筆記試験の内容だけだったら確実に落ちるな、面接を頑張ろうと思った。

面接官は先ほどの笑顔の女性ではなく、髪を後ろで結んだ少しラフな感じの男性、年齢はおそらく私(32歳)と同じかそれより下だっただろうか。

仕事できます!という雰囲気だった。

彼はFlashのスペシャリストのようで、Flashを使っていた私と話が合うと思ったが、よく使っていたFlashのサイト(wonderfl)の話になったときに、私が「wonderfl」を「ワンダーエフエル」と発音したが、彼が「ワンダフル」です。

と訂正したところあたりから空気が悪くなってきた。

彼はその「ワンダフル」のサイトの創設メンバーの1人のようだった、あちゃーと思ったがもうしょうがない。

「スマホゲームはやりますか?」と聞かれた時も「あまりやりません、課金モデルが気に入りません」と答えたので面接はさらに険悪な雰囲気に。

さらに「10年後のビジョンは?」と聞かれ、「安楽に暮らしていたいです」と正直に答えてさらにさらに雰囲気は悪くなった。

お互いダメだなという感じで面接は終了した。

少なくとも私の発言や失言をシャレだとは受け取ってもらえないことは確実だった。

今日は二つとも失敗したかなと思って家に帰った。

しかし、今日の一個目の会社、本郷の教育系ソフトウェア開発会社からはすぐにメールがあり、二次面接に来てくれとの事だった。

そしてもちろん二個目のスマホゲーム開発会社は落ちた。

だが、一番行きたかったところが二次面接に行ったのはうれしいことだった。

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