町の本屋 of 京王線つつじヶ丘 『世界屠畜紀行 THE WORLD'S SLAUGHTERHOUSE TOUR』

totiku

  • 書名:『世界屠畜紀行 THE WORLD’S SLAUGHTERHOUSE TOUR』
  • 著者:内澤旬子
  • ISBN:978-4043943951
  • 刊行日:2011/5/25
  • 価格:857円(税別)
  • 発行:角川書店
  • ページ数:478
  • 形態:文庫

京王線のつつじヶ丘駅の近くに引っ越してきて5ヶ月が経った。

駅の周りにはオオゼキとライフというスーパーが2つ、ドラッグストアー、ドトール、マクドナルド、松屋、ゲオなどが並んでいて、典型的な東京郊外の私鉄駅前の風景である。

北口駅前のロータリーの奥にあるビルの前に幅の広い下り階段があり、その階段の下に書原という書店がある。

あれは私が大学2年生の時だったか、棚卸しのアルバイトをしたのも書原だった。

たしか月島店と阿佐ヶ谷店と霞ヶ関店?(銀座だったような記憶もあるが、公式サイトによると書原は銀座には無いみたい)の3店舗で計3日間の棚卸し作業をした。

2組になって、閉店中の店の中でリストに従って本をチェックしていく仕事だった。

新刊書店の本というのは結構きれいだと思っていたが、すぐに手が汚れてしまい、ずっと置いておけばそりゃ少し汚れるよなと思った記憶がある。

最終日は阿佐ヶ谷店で、仕事が終わって店の裏で給料をもらい(確か3万円くらい)、翌日にそのお金を持ってPlayStation2の本体を新宿に買いに行ったのである。

あれは初めての給料みたいですごく嬉しかった。

という私とは縁のある本屋さんが書原なのである。

棚卸しのバイト以降は縁が無かったが、今では私の家から一番近い本屋となった。

店の雰囲気は、由緒正しい町の本屋(ちょっと大きめの)。

ブックファーストやジュンク堂などとは違い、時間が10年ほど止まっている、と言ったら怒られるので、正しく町の本屋の伝統を守っていると言い換えよう。

私は書原つつじヶ丘店に入ると文庫コーナーに直行する。

書原つつじヶ丘店の文庫コーナーには新刊専用の場所は設けられておらず、各棚の前の平積みコーナーに紛れ込んでいるので見落とすことが多いので注意である。

おやと思ったのが上下巻のあるもので、普通だと上下巻は隣り合って平積みされているが、ここだと上下巻が重なって交互に置かれている。

だから上巻のみを買おうとすると下から下巻が出てきて、「あれ?下巻は買わないの?」と、お客に無言の圧力をかけるのである。

これはスペースの有効活用になるだけでなく、売り上げのアップにも貢献しているのだろう。

文庫コーナーの顔ぶれはそう簡単には変わらない。

そんな中に少しほこりをかぶって鎮座していたのが文庫版『世界屠畜紀行』であった。

数年前から探していたのだが、新刊書店では見つからず、かといって古本屋でも見つからず、忘れかけていたのだがこんなところで出会えるとは。

本書は著者の内澤旬子が屠畜に興味を持ったのをキッカケに韓国、インド、インドネシア、アメリカなどの屠畜事情をレポートしたものである。

筆者自身のイラストが添えられ屠畜の様子がよくわかる。

屠畜に関わる人間に対してのタブーの感覚はどうやって生まれるのか?というのがメインテーマになっていて、読んでいてウーンウーンと唸った。

特にオチも無いのだがつつじヶ丘の書原が好きになった、という話である。