本能寺の変の謎がいま!解き明かされる?『信長殺すべし』

信長殺すべし

  • 書名:『信長殺すべし』
  • 著者:岩崎正吾
  • ISBN:978-4062633396
  • 刊行日:1996年9月15日
  • 発行:講談社文庫
  • ページ数:417
  • 形態:文庫

日本の歴史の謎ベスト10を実施したら、邪馬台国がどこにあったのか?とおそらくトップを争うであろう出来事が本能寺の変である。

何故光秀は信長を襲ったのか?何故秀吉は中国大返しができたのか?何故織田陣営の中で光秀に味方するものが少なかったのか?何故家康は伊賀越えをして三河まで逃げ帰ったのか?何故信長の子供達はすぐに光秀の討伐の兵を起こさなかったのか?などなど、クエスチョンマークのつくことばかりで本能寺の変の謎を考え始めたらキリがない。

安部龍太郎の『信長燃ゆ』では本能寺の変を演出したのは朝廷側の近衛前久であったし、加藤廣の『信長の棺』では秀吉の暗躍がにおわされている。

本能寺の変という事件の実行犯は明智光秀というのは、本能寺の変を扱った創作では大前提となる事実であるが、それを操った黒幕が誰であるか?というのが本能寺モノのウリであり、筆者の腕と想像力の見せ所である。

光秀を操った影の主役候補として有名なのが、まず羽柴秀吉、次に徳川家康、そして近衛前久、これが本能寺の黒幕3大候補であろう、私立大学で言えば早慶上智と言ったところ。

その次のMARCH(明治、青山、立教、中央、法政)レベルなのが、足利義昭、四国の長宗我部元親、中国の毛利、信長に滅ぼされた大名家の遺臣たち、イエズス会であろうか。

で、さらに気になってくるのが光秀が何故実行犯となったか?というところである。その理由としてはずっと信長を恨んでいた、そもそも天下を狙っていた、突発的に襲ってしまった、頭がおかしくなった、などなどである。

で、本書ではそれらの百家争鳴とも言うべき本能寺の謎たちというか、定番の謎をなぞりつつ独自の結論を出すに至るのである、その結論は本能寺の黒幕は甲斐の武田家の遺臣である忍者であるというのだ・・・

筆者は山梨県出身のミステリー作家、だから結論が武田の忍者ということになったのであろう、でその結末自体は本書のウリではない、おそらく筆者のふるさとへのリップサービスみたいなものだ。

本作のウリというか面白いところは本能寺の黒幕がどうか?というよりも、信長を主役とした映画で信長役をやるはずだった俳優が、百花争鳴状態の本能寺の変の謎を整理しつつ読者(物語の中では信長の映画の映画監督や脚本家、秀吉役の落語家など)に説明し、黒幕を推理するという形式になっているところである、非常に珍しい・・・

私はブックオフの100円コーナーでひょいとジャケ買いをしたので、いきなり映画俳優が出てきて面食らったわけである、あ、失敗したかもと思った。最初の50ページくらいまでは何度か読むのやめようと思ったが結局読んでしまった。

で、結局なんだかんだ文句もありつつまあまあ面白かったと思う、途中誰がしゃべってるのかわからない場面とか、前時代的な言い回しに興をそがれたりしたが、大幅な書き直しなんかをして主人公をアニメみたいなキャラクターにしたら結構ウケルんじゃないか、歴女に、と思った、いや受けないか。

あと、普通の歴史小説ではあまり書かれない参考文献が丁寧に巻末に載っている、岩崎さんはかなりマジメなひとなんだなと思った次第である。

あ、あと、面白いなと思ったのが、秀吉が信長を備中高松までおびき寄せて殺そうとしていたかもという説、確かにと思った。