バオ・ダイでもなく溥儀でもなく 『クォン・デ―もう一人のラストエンペラー』

イカのえんぺら・・・ではない

  • 書名:『クォン・デ―もう一人のラストエンペラー』
  • 著者:森達也
  • ISBN: 978-4043625048
  • 刊行日:2007年7月
  • 発行:角川文庫
  • ページ数:351
  • 形態:文庫

あるベトナム人留学生から日本で亡くなったベトナムの王族がいるという事実を知った森達也が、ベトナムの王族「クォン・デ」の生涯を追っていく。

20世紀初頭、日露戦争で大国ロシアに勝ってしまった日本は欧米列強から圧力を受けていた当時のアジアの国々から大きな憧れと羨望を受けていた。

ベトナムも東遊(ドンズー)運動と称して多くのベトナムの若者が日本に渡り、クォン・デも日本にやってくる・・・

森達也はクォン・デの波乱に満ちた生涯をドキュメンタリータッチではなく、あえて小説風になぞっていく。

森達也の感傷的な文章は甘ったるく感じることもあるが、本作ではその甘ったるさがいい味付けとなり、なかなかに読ませるものになっていた。

歴史モノというジャンルに入ってしまうが、主な登場人物の来歴をわかりやすく説明しているので歴史ギライの人にもオススメします。