戦国スパイ小説『銀の島』の登場だ!

ginnosima

  • 書名:『銀の島』
  • 著者:山本兼一
  • ISBN: 978-4022647436
  • 刊行日:2014年5月30日
  • 価格:840円(税別)
  • 発行:朝日文庫
  • ページ数:568
  • 形態:文庫

本作はフランシスコ・ザビエル、その従者アンジロウ、ポルトガルの密使バラッタの3人を軸に描かれた戦国時代のお話である。

第二次大戦前にある日本人がインドのゴアである書物に出会うことで物語は始まる。その書物はザビエルの従者アンジロウが書いたもので、ザビエルの知られざるお話が書かれていた・・・

学者か小説家がある町、または村で知られざる真実が書かれている書物に出会う・・・という風にお話が始まるのが私は好きだ。

「これは真実の話です」と読者に思わせるように話が進んでいき、ウソだろ?と思いつつも、別にウソでもホントウっぽく見える方が物語的には楽しいからウソでもいいや、でもやっぱりホントにあったことなのでは?みたいに感じられる小説が好きだ。

私が10代の終わりに読んでいたフレデリック・フォーサイスのお話なんて、みんなそんな感じであった。『オデッサファイル』なんて、ホントとウソが非常にうまく混じり合っていてスゲー楽しかった。

そのフォーサイスの真骨頂がフランス大統領のシャルル・ド・ゴールの暗殺未遂事件を扱った『ジャッカルの日』で、これはホントウに面白かった。でさらに似たような話だとジャック・ヒギンズの『鷲は舞い降りた』もあって、これはイギリスのチャーチル首相をドイツ軍が誘拐しようとする話なのだが、あ、あとグレン・ミードの『雪の狼』もすごかった。スターリンを暗殺しようとソ連に潜入する話で・・・

話が、それた、イヤあんまりそれてないか。歴史の真実が書かれている!みたいに思わせて読者を楽しませるスパイ小説が私は好きだったのだ。

本作『銀の島』で暗殺もしくは誘拐の対象となるのは、中国地方の石見銀山であり、その事件の実行犯になろうとしているのがポルトガル人のヴァレッタ、そしてそれを防ぐ正義のヒーロー?はアンジロウ、で敵か味方がわからないのがザビエルである。

楽しそうでしょ?読んでいる時には気づいていなかったが、これはスパイ小説である。血沸き肉躍る隠密の攻防戦の舞台は第二次大戦でも冷戦でも戦国時代でも面白いのである。